
さてこんどは、組あがったボディをサンドペーパーで整形しかつ表面を整える、いわゆるサンディングという作業だ。ポイントは3つ、板材を貼りあわせてできた角を落とすこと、上部の皮が当たるところに丸みをつけること、そして全体の表面を滑らかにすること、である。 |
| まず粗めのペーパーを使ってごりごりと角をおとし、その後中ぐらいのペーパー、細めのペーパーと使っていき全体の表面がすべすべになるようにする、とまあ文字で書くのは簡単なのだが実際にやってみるとこれがあなた。特に今回はできるだけきれいな仕上げにしたいという魂胆があるからなおさらなのだが、このサンディングという作業、じつに重労働なんである。とりかかるやいなや、真冬だというのにたちまち汗がふきだし目はくらくら腰はふらふら。2時間ほども格闘し、なんとかできたかな、というレベルまでたどりつく。 | ![]() [PHOTO]格闘およそ2時間。 |
| おおそうだ、ここで「まいっか値」について話しておかねば。このようなシロート作業でありかつ理想的な状態まで達することがたいへん困難な作業のばあい、どこかのレベルで「ま、いっか!このぐらいできれば!」とつぶやくことになるのは避けがたい。いや少なくともおれの場合はそうなるのである。 どのレベルで「ま、いっか!」になるかは状況により常に変動するので、おれはこれを「まいっか値」と呼んでいるのだが、困ったことに、同じ作業が継続するばあいその値はほぼつねに下降する、という法則があるのである。 で、問題はこのボディが円筒型であることなのだった。作業開始の頃、理想を100とするとまあせいぜい90くらいだった「まいっか値」は、筒を回転させながら作業が進むうち85になり80になり、一周して戻って来たころには70になっていてはじめに手をつけた面とくっきり境目ができてしまい愕然とする、などという事態が出来することになるのである。 |
| こうなってしまった時どう対応すればいいかというと、ひとまず一服などして「まいっか値」を上げておき、さきほど最後に処理した面から作業を再開して逆方向に回転させていけばいいのである。こうすれば各面における「まいっか値」はそれなりに平均化し、少なくとも明白な差のある面が隣り合うことだけは避けられるのだ。うむ、このへん、実に論理的であるナ。
などとくだらないことを言っているうちに表面をよく拭いて木粉を落としておき、塗装の下地をつくる目止め作業にはいる。今回使ったのは「木部用プライマー」というスプレーである。こいつが塗装面を整え、かつこの後で塗っていく塗料が木材の内部にしみこまないようにしてくれるのだ。 |
![]() [PHOTO]サンディング終了時。 |
| これはおれとカミサンのバンド仲間で、星見仲間でもあるmako氏(たびたびすみませんが、星のページ「星を見に行く」バンドページ「BONE」などをご参照ありたし)が、自分のギターを塗装したときに自作したもので、厚手のベニヤ板を三面鏡のようにして立てられるようになっており、シンプルな作りながら威力は抜群なのだ。
コの字の横棒を内側にすぼめたようなかたちに立てたブースの真ん中にボディを立ててスプレーを吹き付ける。ボディを回転させながら重ね塗りをしていくのであるが、なにしろ円筒であるからして、最初の一回転はいいのだが、ふた回りめ以降がどこまで回せば終わりなのか分からなくなってしまうのだ。
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![]() [PHOTO]わかりにくいけどプライマーを吹いたところ。 |
![]() プライマーが乾燥したらサンドペーパーで表面を整え、いよいよカラースプレーで色をつけていく。チョイスしたのは「ディープレッド」という名前のちょっと濃くて鮮やかな赤色のスプレーだ。こんどは塗りはじめ地点がわかるよう、ボディ内側の端にガムテープを小さく貼って目印をつけておく。これで万全である。できるだけきれいに仕上がるよう、乾燥と重ね塗りを三回は繰り返そうという魂胆であるから先はまだ長い。まずは一回目を終了し、乾燥するまで放置する。 ところが、だんだん乾いていく塗装面をよく見ると、どうもボディ上部の塗りだけがほかよりも薄いのである。塗装するときはビニールシートの上にボディを逆さまにして直接立てていたのだが、上から下へ順にスプレーを吹いていくとき、シートとの接点のあたりでスプレーと塗装面との角度や距離が変化してしまうためであるらしい。ということは、何かスタンドのようなものが、このボディを浮かした状態で保持でき、かつ回転させられるようなものがあればよいということだ。さてどうしたものかとあたりを見回すと、あったあったいいものが。よし、どうせ乾燥待ちのあいだはなにもできないのだ。この隙に即席塗装スタンドを作っておくことにしよう。 |
| おれが見つけた「いいもの」とは、ずいぶん昔に雑貨屋で購入した小さな一本足の丸テーブルと、50枚入りCD-Rのケースである。ネジこみ式で固定するようになっているテーブルの天板を外し、ぐらつかないように丸めた新聞紙を詰めたCD-Rケースのふたをかぶせて全体を新聞紙で厳重におおえば、ほら、立派な塗装スタンドのできあがりである。これにボディを逆さまにかぶせて回転させながら塗っていこうというわけである。ちょうどそろそろ塗装も乾いたころだ。おれはほくそ笑みながら、ボディをかかえて浴室に移動した。 | ![]() [PHOTO]即席塗装スタンド製作の図。 |
| なぜ浴室に行ったかというと、風呂に入るためではもちろんなく、重ね塗りをする前に耐水ペーパーで塗装面を磨いておくためである。 このあたり、今回はたいへん周到なんである。 ところが、ここで大事件が起きてしまうのだ。原因はおそらくふたつ、ひとつにはサンディング作業のツメがあまく、角を落としてできた面ともともとの面との境界が角ばっていたこと。もうひとつは耐水ペーパーの番手を誤ったことである(おそらく後者のほうが大きいのではないかと思う)。 なにが起きたかというと、調子よく耐水ペーパーをかけていったら、あっというまに白いすじが何本もできてしまったのである。白く見えるのは塗料が完全に剥がれてしまい木の色が出ているからだ。しかもよく見るとプライマーまでもが剥げ落ちており、完全に地の木材が露出してしまっているのである。ということは、このまま重ね塗りをしてもこのすじの部分には塗料がしみこんでしまうということだ。そこだけ色目が変わってしまうに違いない。なんということだ。おれはめくり上げたジーパンの裾を戻すのも忘れ、呆然と風呂場に立ちつくしたのである。 |
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