星を見に行く。
-わしらはいかにして星空にとりつかれたかの物語-
ご注意:このお話はある程度現実に近いとはいえあくまでフィクションであり
実在の人物・団体とは原則として関係あります、もとい、ありません。
| 2001/2/14(wed)五島の浜 どうやらおれたちはかなりのセンで星見中毒になっているらしい。あたりが暗くなって空が晴れていると、どうにも落ち着かないのである。今夜もきれいに晴れわたった夜空を見上げながら家に帰ると、案の定mako氏から電話があった。「空、晴れてるデ。海、行かへん?」 この夜空を見ては行かないわけにはいかない。浜でならもっときれいに見えるに決まっているのだ。 さっそく望遠鏡を積んでクルマを走らせる。いつものポイントに到着してクルマを降りるなり、おれたちは驚嘆の声をあげた。予想どおりすばらしい星空なのである。今までで最高のコンディションではないだろうか。 普段は細部まではよく分からないうみへび座が、そのくねらせた胴体をかたちづくる細かな星々まで眼視できるのにおれは感動した。しかしながらアンドロメダは、西の低い空が明るくてだめなのだ。ペルセウス座はやや低い位置ではあるもののくっきりと輝いており、その少し下方に間違いなくアンドロメダ座があるはずなのに。このあたりから西にかけては豊橋市にいたる国道1号線とそのバイパスが海岸近くを走っており、町並みがずっと続いているのだ。そのせいで西の空がどうしても明るいのだろう。 アンドロメダはあきらめ、いつのもように土星や木星を堪能したあと、帰りがけに新しい星見スポットを探してみることにする。海岸線沿いでクルマを停められる場所をあちこちあたってみるが、どこも周囲が明るい。ううむやはりこの近辺の海岸では五島の浜が一番なのだろうか。帰り際にすこし遠回りをして見つけたのが、海からやや奥まった浜名湖の湖岸にある亀崎という公園の駐車場だ。周囲はかなり暗く、ひょっとしたら期待できるかもしれない。次回はここに来てみることにしよう。 2001/2/15(thu)亀崎駐車場 いま「次回」と書いたが実はもう翌日に来てしまったのである。今夜はカミサンが友人との約束で出かけておりmako氏からのお誘い電話もないのだが、帰宅途中の空を見たらいてもたってもおられず、初の単独行にでかけることにしたのだ。 駐車場に着いてみると、時間帯が早いせいか空は想像したほどには暗くなく、市街地方向である東にくわえて西から北にかけての空がかなり明るい。そうだった、ここの北西すぐ近くには舘山寺という温泉があるのだ。そりゃあ温泉街が暗くては具合がわるかろう、明るいに決まっているのだった。 西の空がこんな状態ではアンドロメダ座など見えようはずもないが、それでも明るい惑星なら見えるだろうとクルマの脇の地面にあぐらをかいて座りこみ、膝の間にウルトラスカイ1号を据えてアイピースを覗きこむ。ファインダーで天頂付近を狙うとき以外はこの姿勢がいちばん楽なことに最近気づいたのだ。 思った通りこの空でも惑星たちはよく見える。金星は細い金色の三日月状に美しく輝いており、木星も縞まではよくわからないがお供のガリレオ衛星もきちんと見える。うふふ、今日もわが愛機は頼もしく働いてくれているのだ。 ついで土星へと鏡筒を向ける。そうだここで土星の可愛いらしさについて触れておかなければなるまい。そうなのだ、土星というものはなんともいえず可愛い星なのである。あまり倍率を上げずに見ていると、輪っかのついた小さな星が視野の中をけなげにもとことこ動いていくさまに、愛おしさすら感じてしまうのだ。いま動いていく、と書いたけれども、ふつう空を仰いでもあんまり動いているようには見えない星たちも望遠鏡の拡大された視野の中ではけっこうなスピードで動いて見えるのだ(もちろん、実際には地球のほうが動いている、というか回っているわけですね)。初めて見た時はそのスピードに面食らったものである。 なんだか今夜はやけに土星ばっかり見てしまったなあ。 2001/2/17(sat)幡教寺跡〜五島の浜 さておれたちは新たなる星見スポット探しへの旅へと出なければならないのだ、ちょっと大げさだが。 天気も上々、今日は山方面を攻めてみよう。まずは昼間のうちに下見をしておくことにする。地図を拡げて浜松近辺で標高の高い場所を探してみると、浜松の北西部、三ヶ日町にある富幕山(地元のひとでないと読み方わからないでしょう、これ「とんまくやま」と読むのだ)というところが標高563m、道路も山頂近くまで通じており、気軽に行ける範囲では最高峰であるようだ。今日はここをターゲットにする。 前回書いた奥山高原のあたりから山のなかに入っていくのだが、道はもう完全にダートである。路肩にうっそうと繁る木々のなか、悪路をえっちらおっちら進んでいくと突如、左手がまるで公園のように開けた場所に出る。案内看板によればここは幡教寺跡といって古いお寺の跡であるらしい。山頂へはここから徒歩で登るしかなく望遠鏡をかついで行くのは諦めたほうがよさそうだが、この幡教寺跡、公園のようにと書いたとおり、地面はなだらかにちょっとした丘のように弧を描き、まるで芝を植えたようにいい具合に下草が茂っており、トイレまであるのだ。 南から東にかけてが立木に覆われており、北は山頂方向だから低い空は西側しか見えないが、どのみち東南の空は市街地方向でありかなり明るいだろうから、実質見えないのは北側の低空だけということになりそうだ。問題なし、というよりグッドロケーションというべきであろう。今日の星見ポイントはここ「幡教寺跡」に決定。 周辺をドライブして少し時間をつぶしたあと6時ごろ再度到着したのだが、残念なことに夕方から次第に雲があやしく増えはじめ、空がどんどん狭くなっていく一方だ。だがしかし、今日は実はmako氏のNewアイピース、例の返品して買い直した31.7mm広角アイピースが初登板を待っているのだ。急いで望遠鏡をセッティングし夜空を覗く。さすがに今度は何の問題もなく装着できたNewアイピースはすぐさまその威力を発揮し、三日月状に輝く金星や木星、土星、オリオン大星雲もくっきり見える。mako氏はご満悦の呈である。そりゃそうだろうな。やがて雲が空いちめんを覆ってしまい、8時ごろあえなく撤収。 さて、3度めの正直なるか、今夜も仮眠をとって夜明け前の海に火星を見にいくつもりなのだ。起きてみると、雲は多いがいくらか切れ間があり星もまたたいているようだ。いそいで浜まで走るとちょうど東側に雲の切れ目があり、火星が明るく赤くのぼってきていた。ついに火星にお目見えするのだ、コーフンのうちにセッティングをすませアイピースをのぞき込む。 おお、火星だ火星だこれが火星なのだ。大接近にはまだ遠く、ほとんど点にちかい微少な円盤にしか見えないけれど、このちいさくもするどく輝く赤い点が、いにしえのSF少年の胸を踊らせたあの火星、ウェルズの火星人や緑色の火星人や火星年代記や、その他たくさんのたくさんの、あの懐かしい火星人たちの星なのだ。感動にしばしふるえる。 火星と出会えたコーフンが一段落したところで、雲の切れ間をぬって星雲探しにトライしてみることにする。これも昔からずっと見てみたかったソンブレロ星雲が南の空、おとめ座付近にいるはずなのだ。ウルトラスカイ1号ではまったく存在がわからないのだが、mako氏DS-115+新アイピースでそれらしきものがぼんやりと、もう実にぼんやりと、なあんとなくあの辺に何かもやもやしたものがあるような気がするなあ、という程度ではあるけれど、確かに見える。ついでmako氏が北斗七星近くにあるM81,82の両星雲の導入に成功。本で見るとこのふたつの星雲はハの字がたに並んで見えるのだが、やはり先ほどと同じようにうすらぼんやりと、あるかなしかのシミのように見えているのだった。 ううむオリオン大星雲の見え方とはずいぶん違うものなのだなあ。しかし今日は良い星見ポイントも見つかったし火星にも会えたし星雲たちももかすかながらにに見えたし、いうことなしの一日なのだった。 2001/2/18(sun)幡教寺跡 といいつつその日のうちにまたもやって来ました幡教寺跡。6時ごろ到着した時には雲ひとつなく、これは最高のコンディションかと思われたのだが、セッティングしているうちにみるみる雲が増えてきてしまい、しかたなくクルマのなかで晴れ間待ちをする。 やがて空がクリアになってきた。南方向と北方向はかなり良く見えるのだが、やはり市街地方向の東と、おそらく豊橋の街あかりであろう西はここでも苦しいようだ。 昨日というか今朝の星雲導入に気をよくし、ソンブレロ星雲とハの字(M81.82)にトライ。mako氏DS-115でとらえたこれらの星雲は、今朝にくらべてこころなしかはっきり見えているように思われる。やはり浜よりここのほうが空が暗いのだろうか。 しかしながら、ウルトラスカイでこれらのような星雲を導入するのは至難のワザなのだった。やはりこういう時は前回書いたように自動導入装置がモノを言う。いずれもよおく見ていると、というよりちょっと目を視野の中心からそらし気味にしてじっと見ていると、ようやくぼんやりと感じることができるような存在である。したがってファインダーでは到底見えず、ウルトラスカイで見るためには周囲の星の配置から見当をつけて鏡筒を慎重に動かしていくほかないのだが、これがなかなかうまくいかない。 かがんだ姿勢のまま微調整を続けているうちにからだのあちこちが痛くなってきてしまったので今日は星雲探しを諦め、かわりに二重星を見てみることにする。しし座γ星がちょうどいい高さに来ているのだ。肉眼ではひとつの星にしか見えないが、ウルトラスカイの視野にとらえると、おおなんと、オレンジ色の星が大小ふたつ、寄り添うようにして光っているのがはっきりわかるではないか。じつに美しい眺めである。しばし見入ってしまう。 いつも見ているオリオン星雲、木星土星、すばるなどもきわめてクリアに見える。やはりここはいいポイントなのだ。特にオリオン星雲の美しさにはいつも以上に圧倒される。 しかしmako氏のMEADEが、どういうわけか今日は導入と追尾の精度がいまひとつ悪いのである。いっぱつで目標の天体が視野に入ることはまずなく、またせっかく導入してもすこし放っておくとすぐに視野からずれていってしまうのだ。初めの設定を何度やり直してもだめのようなのだった。mako氏はご立腹の呈であるが、急にこわれるなんてことも考えにくいしなあ。まあ今日はいい空のコンディションで見ることができたんだからいいじゃない。
2001/2/22(thu)五島の浜 今日は金星が最大光度になる、と天文雑誌から情報を得ていたのでぜひ見たいと思っていたのだが、仕事が長びいてしまい、浜に着いたときにはもう沈んでしまっていたのだった。ううん残念。 しかし今夜もうひとつ狙いがあるのである。ちょうどほぼ頭上あたりに来ている、かに座のなかにプレセベ星団というものがあるのだ。これをぜひ見てみたい。本によれば条件がよければ肉眼でもうっすら存在がわかるのことだが、残念ながらこことおぼしきあたりをじっと睨んでみても何も見えない。ウルトラスカイの鏡筒を向けてみるが、ファインダーでもやはりただの暗い空であり「とらえた」という感じはつかめない。しかし、まあおおむねここらへんだろう、と見当をつけてアイピースを覗いてみると、おおどうだ、輝く星つぶが宝石箱のように集まっているのがくっきりと見えるではないか。星団というのはこんなにも美しいものであったのか。本で見る写真よりもずっときれいである。単眼で見ているのだからそんなはずはないのだけれどもまるで奥行きがあるように感じられ、吸い込まれるような美しさなのだ。 ついでふたご座の足もとにあるM35に鏡筒を向ける。こちらも実に美しい。中央部に明るい星が八の字がたに並んでおり、あたりまえだが写真のとおりなので感動する。調子に乗ってぎょしゃ座の五角形のなかにある散開星団、M36、37、38をとらえようとするがこれがウルトラスカイではどうしてもうまくいかない。mako氏DS-115の自動導入でようやっとその姿を見ることができた。今日のハイライトは星団の美しさ発見! さてmako氏のDS-115、今日はやけにすんなりと導入できる。話はもどるが望遠鏡のセッティングをしているときのことだ。方角を合わせていたmako氏が小さな声で「あれ」と言った。 (またか、とお思いでしょうが)「・・・ねえ、北極星ってアレやったよねえ」 |
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| (4.へ続く) |
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